あたしの頭はただこんがらがってた。
楠と南さんとの関係。時折見せる空虚な表情。
まるで作りものみたい。
「演劇中も、襲われないように気をつけろよ?」
「おそっ…?!///」
「キスシーンないのが残念だったなー。…しちゃう?」
横目でめくばせ。
どこでだれが聞いてるやも分かんないのに…
「そーゆーこと言うなし!」
「俺本気。すっげー甘いの噛ましてやるけど…?」
「バカ!!しないって言ったらしない!!!!」
あたしのこの発言に静まり返る舞台裏。
さっきまでのざわつきが嘘のよう。
やばー…
南さんが居た位置を含めて視界に入れたものの…
本人がいなかった。
…どこいっちゃったんだろ。
「何キョロキョロしてんだよ…。はぁ…―――キス決定、だな」
「ちょ、勝手に決めないでってば!」
悪魔のようなほほ笑みは、いつしかあたしを甘い海に突き落とした。