廊下中の視線があたしに集まる。
あたしは手ですくえるだけの髪を拾って、資料をもって図書室にもぐりこんだ。
それから美容院でショートボブにしちゃったわけ。
こんなの楠に見せられるわけなくて、ずっと逃げ隠れしてるわけだけど…
「―――愛梨…後ろ…」
「へ?」
結衣が冷めきった視線をあたしの後ろに向けていた。
な、何???
ゆっくりと後ろを振り返っ………
「わぁぁぁぁぁッ!!!!」
そこにはすごい形相の楠。
「お前、何ソレ。どした」
「髪でしょ…。別になんでもないよ」
「―――似合ってるじゃん。超俺好み♪」
「バカ!アンタ好みになった覚えはないっつーの!!」
届かない脳天にチョップをいれるフリをしてみたり。
っていうか…気づいてくれたんだ。
遠くから見ても、あたしが誰だかわかんないはずなのに…
そう思うとキュンとした。
だめだめ!あたしまでコイツの餌食になるわけには…
「お前さ…最近なんかされてねぇ?」
「…大丈夫。されてないよ?」
嘘。
髪切られたよ。あれは、故意にやらなきゃ無理。
分かってるけど、楠に頼るわけにいかない。
首謀者はあたしがみつけるんだから。