「楠猛…。―――楠」





アイツと関わりを持つようになってから気付いた。




あたしを弄んだ最低な元彼も『楠』だった。





ただ、年齢の違いだけで…遊び具合はそっくりなんだ。





だからふとした瞬間、例えば名前を読んだ時…




『楠先輩っ』「楠っ!!アンタね…―――」




思い出して嫌になる。あたしのコンプレックスを散々ついた揚句





他の女の子連れてきて、見せつけた。





あたしを捨てた…





最低な形で。





だからあたしは楠を、アイツを放っておけないのかもしれない。





深いため息をついた直後、携帯が早く出ろと言わんばかりにうるさく鳴り響いた。






「―――非通知…?」





なんか緊急っぽいしな。この時間だもんね。





ふてぶてしく電話を取った。