「あっ南さッ…」
あたしが手を伸ばした時にはもう遅かった。
…南さん泣いてたよ?
楠、アンタはそれを分かってて酷いこと言った?それとも…――――
「お前もアイツの言葉にいちいち乗せられてんじゃねーよ…」
「は?」
「デート行ってあげろ的なこと言ってたろうが。バカ」
「アンタにバカって言われる筋合いないっての!!」
反省の色がうかがえない。
なんかムカつくじゃん。
女の子泣かせて放置なんて。
「…はぁ…なんか呆れた。帰って」
「なんで」
「なんで、じゃないし。帰って」
楠みてると嫌なこと思い出すし。
『―――お前なんかに俺が本気になると…―――――』
ズキ…
「わーったよ…邪魔したな…」
静かに閉まる部屋の扉の音が空っぽになったあたしの中で響いた。
なんで、あたしが‘あんなこと’思い出してモヤモヤしなきゃいけないわけ…?