なに、この過剰反応。
結衣の言うとおり、廊下には先輩女子から囲まれてる楠猛が笑っていた。
その笑顔、あの時とギャップありすぎませんか…?
ってか、冷静に観察してる場合か、あたし!
「えっと…飲み物買ってこようかな―」
「え?!あっ、愛梨?!~~逃げるなぁぁ!」
そそくさと席を立つあたしに結衣はカンカン。
に、逃げてないし!
これは防衛だっ!
…今アイツの顔まともに見たら自爆するに決まってる。
自分で教室カミングアウトなんて嫌だもん。
「ありえないっ…意識しすぎなんだよね…」
分かってる…
分かってるけど…授業中、会話中、思い浮かぶのはアイツの顔。
ファーストキスを奪った、最低なアイツの顔。
「なーにが、意識しすぎなの?」
「アイツのこと…―――――――え?!」
勢いよく振り返った先には…いたずらっぽく笑う、‘アイツ’。
張本人!!
ヤバっ…。
「‘アイツ’って誰_?」
まるでドラマや映画の悪役のように笑う楠。さっきまで囲まれてた奴と同一人物とは思えない。