この古民家は私の住処でもあるのだ。


 ここを買い取った時、父は和風の居酒屋にするつもりだった。

 それが小さなバーに変更されたのは、私が勤めていた会社を気紛れに辞めてしまったから。

 優しい父はここを私の店として任せる事にしたのだ。

 居酒屋なんて騒々しい店はいらない、と言った私の意見は承認され、おまけに実家を出ると言った最大の我が儘も承認された。

 この店舗に住み込む事が条件だったけれど、私は家を出れればどこでも良かったし、ここなら家賃もいらないし、喜んで条件を呑んだ。