長い長い沈黙の後、貴方は作業を再開した。

 おや、無視を決め込みましたね?

 私を無視ですか。

 良い度胸です。

 馬鹿で妄想癖のある変態を無視なんかしたら、また暴走しますよ?

 クスクスと笑う私の声も完全に無視して背を向ける貴方。

 可愛すぎです。

 滑皮のソファーは立ち上がった時に、ギシリと低い音を発てた。

 ゆっくりカウンターの中に移動する私に貴方の緊張が伝わってきそうです。


「今日の竜哉サンは、アタシに襲って欲しい感じですよ。どうしたんですか?」

「くだらない妄想ですね。」


 弱々しい貴方の声に、私は益々笑いが込み上げてしまった。

 全く、どこまで意地を張り通す気なんでしょうか。

 こんなに真っ赤で一体どれくらい熱があるんでしょう。

 こんなにふらついている事に自分で気付いていないなんて。

 肉体的に重症ですよ?

 私は精神的に重症ですけどね。