「あのー・・・楠本さん。それで、私は何をしに、どこに行くんですか?」

 駄目元でもう一度だけ、聞いてみようと口を開く。

 きゅうりは前を向いたままで、さっきまでの何回かと同じ答えを短く返してきた。

「行けば、判る」


 ―――――駄目だ、こりゃ。諦めた。

 深くシートに沈みこむ。

 人間諦めも肝心よね、ある程度は、さ。

 あああ~・・・それにしても、お腹、空いた。ご飯食べれなかったもんなあ~・・・。うううう、なぜ、本当にどーして私がこんな目に。

 窓の外に注意をむけ、年末に帰る実家のことを考えていた。電車まだ手配してないしな・・・帰れば楽なんだろうけど、帰るのを考えるのが面倒臭くなってきた・・・。
 
 帰ったら楽しい時間を過ごせることは判ってる。自分でご飯も作らなくていいし。一生食べろってか!?って思うくらいのご飯をお母さんが出してきて、それでそれで・・・。

 考えている間に車は都心へ入っていった。

 高速をおりて、下道に入り、クリスマスのイルミネーションで飾られてお祭りみたいに明るいビルの駐車場に車を停めた。

「わあ、綺麗」

 思わず声が出た。ねえ、楠本さんと言いかけて振り返ると、きゅうりはさっさとシートベルトをはずし、外に出てコートを着ている。

「・・・・」