やけくそな気分でまた靴をはいて、鞄を手にもった。

「・・・準備、出来ました」

 笑う気にはならず、むすっとして言う。

 外に出て、鍵をしめた。

「悪いな、行けば判るから、頼む」

 苦笑してきゅうりは言ったけど、口調から、何かの緊張が感じ取れたから、返事はしなかった。

 どうせ口でも何でも勝てる相手ではない。

 もう、なるようになれ、だ。




 車は都心にむかっていた。

 窓の外にはクリスマスイブの街がキラキラと輝いている。音楽があふれ、笑顔もあふれ、皆家族や恋人と一緒にお祝いしているんだろうなあ、と窓枠を指でなでる。

 車に乗って移動してる間に、雪もやんでしまった。空を見上げたら雲も多いから、また降るかもしれないけど。

 私は好きな人の車に乗っている。―――――ただし、デートじゃない。・・・デートじゃない所か・・・他の女性に会いに行くのだ。何てこったい。

 ため息をついた。

 しかも理由は話してもらってなくて、『頼み』の中身もイマイチ判らず、人形みたいなかわいい女の人ときゅうりが並ぶのを見る羽目になるらしい。・・・みせつけなくても、お似合いなのは判ってるよーだ。胸のうちでぶつぶついう。