「訓練なんて、日本じゃダメなのか?」




辛そうな顔で必死に声を出す。




また椎のそんな顔を見てしまった。




触れたい、って気持ちは出てくる。




でも、それに負けてしまえば




あたしは椎から離れられなくなりそう。





「本格的な訓練を受けたいの。もっと世界を知って、そして......」





落としていた目線を、椎へと向ける。




「女のあたしでも、椎を守れるくらい強くなりたいの」




自然に無理もなく、微笑む。





「命令。俺から離れないでよ」




頼むような目。




でもね、あたしはそれに応えられない。




「もう椎の誕生日は終わったの。あの契約書は無意味だよ」




宥めるように言い聞かせる。




普段、椎は契約書のことを何も言わない。




そんな椎がこれで縛ろうとするなんて、初めて。