速水side

高山が店を出た。

伏せていた顔を上げる。
自分でも驚くくらい顔が熱い。

「・・・26にもなって、何してんだ俺は」

人を大切にする術を知りすぎている自分。
”愛”という言葉は残酷だ。

ふと、溜息をつく。

「うかうかしてっと、またあの兄弟に持ってかれんな。」

誰もいない店に、俺の声だけ浮かんだ。