春樹が帰る少し前にリクが買いものから帰ってきた。


リクの作ったホカホカのご馳走が机の上に並んでいく。


「食べられなかったら残していいからね」

「……うん」


リクは相変わらず優しい。

けど。その優しさは別にあたしが特別ってことじゃないんだよね。

そう分かっていてもあたしに向けられるリクの笑顔を見ているとまたまた勘違いしそうになる。

そんなに優しくしないでほしい。


リクが嬉しそうに話すのを見ていたら色んな想いが溢れてきて鼻の奥がツンとしてきた。


「あたし……やっぱり調子悪いや。お風呂入って早めに寝るね」


リクから逃げるようにお風呂に入ってすぐにベットに潜りこんだ。


自分の部屋に帰ればいいんだろうけど拓にぃが居ないことをリクは知ってるからここに居ろって言うだろうし、それにやっぱりあたしはリクの傍にいたい。


眠れずに寝返りを繰り返しているとリクが部屋に入ってくる気配がした。

あたしがもう眠っていると思っているんだろう。足音をたてないように気を使ってくれているのが分かる。


すぐに寝るのだろうと思っていたけれどなかなかこっちに来ないから気になってそっと覗いてみた。


「ごめん。起こしちゃった」

間接照明のオレンジ色の明かりの下でリクは何かを見ていた。

「ううん。眠れなかったから」

リクはあたしの傍に来るとベッドに座る。

手には白くて四角いものを持っていた。

それには見覚えがある。

「アルバム?」

初めてリクの部屋に来たときに盗み見た中学の卒業アルバム。

「そう……この写真誰か分かる?」

起き上がりリクが差し出した一枚の写真を受け取るとじっくりとその写真を眺めた。

ニッコリと可愛らしい笑顔の女の子が写っている。


誰だろう……

この写真前にあたしが挟んだものだよね。


あの時も誰だろうって不思議だった。