結局浩太の分も平らげると満足そうにお腹をさするあたしをみて澤田先生はため息をついていた。


「お前な。そんな姿は海道に見せない方がいいぞ」

「なんで?」

いつも見せてるけどそれが何か?

「百年の恋も冷める……」

「…………」

そうなの?

リクは美味しそうに食べるあたしを見ていつも嬉しそうだけど。

「たまに変わった奴もいるかもしれないがな。大抵の男は小食で可愛らしく笑う『女の子』が好みだからな」

「へ~先生はそんな女性がタイプなんですね」

「俺の話しじゃなくてだな」

「そんなことよりも。先生あの棚なんとかなりませんか?」

澤田先生の手作りとか言う棚を指さして言った。

「なんだ。いい出来だろ?」

「揺れますよ」

「揺れる?」

「はい。すごく揺れます。はっきり言って危ないですよ」

そんな筈は……と先生は木の枠を持って動かすとグラグラと少しだけ揺れた。

「大したことはないだろ。まああれだな。気を付けて置けば大丈夫だろ。今日はもういいから上原も帰れよ」

先生にとっての自信作だから否定されたくない気持ちも分かる。だからそれ以上は言わないであげることにした。



あたしってなんて優しいんだ。




食べ散らかしたおにぎりの残骸をコンビニ袋の中に詰めごみ箱に捨てに行く。


「椎名くんって部活は何をしているんですか?」

試合がどうとか言っていたのをふと思い出して聞いてみた。

「テニスだけど。なんだ上原は知らなかったのか?」

「今まで同じクラスになったことがないから知らないですよ」

「結構有名だぞ?何度も優勝してるし。それにあの顔だから女子に人気がある」

「へ~」

モテるんだったらストーカーなんてしなきゃいいのに。

もうあたしの中では完全なストーカー扱いだ。



「まぁ上原は海道しか目に入ってないんだろうけど。
椎名だって『テニスの王子様』って言われてるぐらい有名だから知らない奴がいるとは思わなかったけど……上原は例外か」

「テニスの王子様って……ぶっ」

あたしが吹き出すと先生は顔を真っ赤にして「俺が言ったんじゃない」とか否定してたけど、あたしの笑いはなかなか治まらなかった。