「僕の事何も聞かないんだね」


先生に押し付けられたプリント整理に集中すること20分。

椎名くんが横から不意にそんなことを言ってきた。


そう言えばここに来てから椎名くんと会話すらしていなかったような……

あれ?違うな。

教室でもあたしが前で係り決めをして椎名くんは黒板に名前を書いてくれていたような……


「聞くも何も……」


椎名くんのことを知らないし。と言葉を続けようとして口が止まってしまった。


それは隣に座っている椎名くんを見たから。


「やっとこっち向いてくれた」


ニッコリと笑うその笑顔には見覚えがある。


「あなたは……」

「椎名浩太。同じクラスになるなんて。本当に運命かもしれないね」


よろしくね。と右手を出されてあたしは思わず立ち上がった。


「な、な、な、なんで?!」

「だって同じ学校だから同じクラスになることだってあるよ」

「同じ学校……?だってあの時そんなこと一言も……」

クスクス笑っている椎名くんを上から見下ろすあたしはかなり慌てふためいている。

だって。あのストーカー(だと思い込んでいる)が同じクラスでしかも今密室に二人でいるのだから。


「あのさ。座ったら?」


どうして今まで気づかなかったんだろう……

昨日倒れたことであたしはおかしくなったんじゃないのかって結論を出してみる。


そう。自分でも思う。今日のあたしはとことんおかし過ぎるから。