後ろ髪を引かれる思いでリクと別れ先生の言う準備室とやらへ行く。

リクは終わるまで待ってるからって言ってくれたけど、澤田先生がそう易々と雑用地獄から解放してくれるわけがない。

っていうことでリクには先に帰ってもらうことにした。


ったくーーー


何を指示されるかわからないけど、絶対今日中に終わらせて明日からは普通の女子高生としての放課後を過ごすんだから。


勢いよく引き戸を開けると後ろ向きで座っている男子生徒がいた。


確か澤田先生が椎名はもう行ってるとかなんとか言ってたな。


「二人揃ったな」

準備室に入ろうとしたあたしを押しのけるように澤田先生が先に入って行った。

「センセー時間とかかかりませんよね?」

人に物を頼んでおいてその態度ってなくない?

少しムッとした声で先生の背中に向かって聞いてみた。

「ここにあるプリントを番号順にファイルに綴じるだけだぞ」

「綴じるだけって……これ全部?」

机の上に乱雑に置かれている段ボール箱を開けるとそこにはぎっしりとプリントが入っていた。

「それと、これもな」

先生が床を指さした先を辿ると机の横に積み重なった段ボールが積み重なっている。

「げっ」

「今日中には無理だろうから少しずつでいいからな。まぁ。二週間もあれば出来るだろう」


に……二週間?

嘘でしょ。二週間も居残りをしなくちゃいけないの?


あたしが唖然としていると、座っていた男子生徒が隣に立った先生に向かって言った。



「一か月後に試合があるので一週間で終わらせます」

「おお。そうだったな。椎名は優勝候補だもんな。そんな期待の星に雑用を頼んで申し訳ないなぁ。なんなら上原に全部押し付けても構わんぞ?」



なんですと?



何て事をぬかすんだと先生を睨んでいると「いいえ。大丈夫です」と副委員長が言ってくれたので一安心。

これを一人で全部するとなった日には……余裕で一か月はかかりそうだ。


黙々と作業をしている椎名くんの横に座ると腕まくりをした。



あたしだって早く終わらせたい。




自分がするはずだった面倒くさい雑用を文句ひとつ言わずに引き受ける従順な奴隷を二人も手に入れたと澤田先生はほくそ笑んでいるに違いない。


絶対そうよ!


「早く終わらせてやるっ」


意気揚々と箱からプリントを束で掴み取ると素早く番号順に並べた。