「こちらのベッドは……」

女の店員さんの説明を熱心に聞いているリクの横であたしはベッドに座ったり寝転んだり一人で楽しんでいた。

「今度はダブルにしようと思うんだけど、リツはどう思う?」

「あの部屋にダブルか」

確かに家具も物も少ないリクの部屋なら十分置けそうな気はするけど……

「リクってそんなに寝相悪いの?」

展示品のベッドの上でゴロゴロっと転がりダブルベッドの広さを実感する。

「寝相は悪くはないけど」

そう言って、寝転んでるあたしの隣にリクも寝転んだ。

「やっぱり広すぎるよね」

二人とも仰向けで天井を見ながらの会話。

「そうかも。二人で寝転んでもこんなに余裕があるよ?」

あたしは手をばたつかせて広さをリクに伝えた。

「そうだよね……だったらセミダブルで」

リクは起き上がると同じ形で一つ小さいサイズのベッドに寝転んだ。

「寝心地はどう?」

上からリクを覗き込む。

リクは「どうしようかな」と一度起き上がると「リツも寝てみて」とあたしと交代した。

う~ん。寝心地は悪くない。けど、セミダブルだって広すぎるような気がするけど?

店員さんがニコリと微笑んで「お二人ででしたら、このタイプのベッドは丁度いいかもしれませんね。お客様は小柄ですし」

あたしはガバッと起き上がる。

「い、いえ。一人です!リクが一人で寝るんです!!」

顔を真っ赤にしながら否定すると店員さんはまた微笑む。

だから、違うんだってば。

リクも何とか言ってよ。と辺りを見回すとリクの姿がない。

リク、どこ行ったんだろ?


マットのコイルがどうだとか、訳の分からない説明をあたしが代わりに聞いているとリクがひょこっと帰ってきた。

「リツ。これに抱きついて横になって」

どこから持ってきたのかリクは抱き枕を抱えている。

あたしは言われるままに抱き枕に抱きつくと、横向きで寝転がる。

背中を向けた方にリクが寝転がって暫く沈黙。


「これにしよ」


どこをどう気に入ったのかさっぱり分からないけど、まあ、リクが気に入ったのならいいや。