そこには、人間界に行って、使えそうな人間を悪魔化すること。魔王、元魔王も関わる大きな計画であること、などなどが書かれていた。
「…概要は分かりました。…でも…ここまでするメリットがあるでしょうか? そんなことをするくらいなら、見習いを教育する施設でも作ったほうがよっぽど…」
書かれていたのは、どう考えても割に合わない馬鹿げたプランだった。
人手が足りていないわけでもない。日々、たくさんの見習い悪魔が捨てられているのだ。
「…いや、まぁオレも正直そう思うんだけどさ。でも元魔王の命令なんだよ」
魔王は面倒くさそうにそう言った。
「元魔王様に、思惑を聞いてみてはどうでしょう? このプランはちょっと、どう考えても…」
ライトが何気なくそう言うと、魔王は一瞬、困ったような顔をした。が。
「……おまえ、魔王であるオレの言うことが聞けないのか? 思惑だとかそういうのは、おまえが知る必要はない。勘違いするな」
そう言って睨みつけ、魔力で首を絞めた。
「っぐあ…っ」
そのまま、宙に引き上げられ、首吊り状態になる。
「っぐ…う……も、申し訳ありません…っ」
ライトがそう言うと、首が解放され、床に叩きつけられた。
「…って……うう…」
ライトは暫く、その場に蹲って咳き込んでいた。
「使ってほしいって言ったのはおまえだろ。おまえは黙って言うことを聞いてればいいんだよ。分かったな」
「は、はい…。申し訳ありませんでした……」

その後、暫くこの件について話した後、帰宅した。
「ふぅ…殺されるかと思った…」
ライトは首を擦りながらそう言って、書類をもう一度見た。
「なんなんだ一体。何か思惑があるはず…」
…天界が関係しているのだろうか?
考えられるのは、それくらいだった。
「…そういや、昔会ったあの子は、今何してんのかな…」
ライトは、昔自分を助けてくれた天使を思い出した。
その時ライトはまだ見習いで、いろいろあって大怪我をしていた。
そこにその天使が現れて。
捕まる、と、思った。なのに…
その天使は、ライトの傷を治し、捕まえずに去っていった。
「そんな怪我してる子、捕まえられるわけないじゃない」と。
当時、その優しさに、亡き母親を思い出して泣いた。
「・・・・・・」
とりあえず人間界へ行けば、何か分かるのだろうか?
魔界のボスであるライトが天界の情報を入手するのは、容易ではない。
「…ったく。余計な動きを見せないでほしいなぁ。計画が狂う」
ライトはそう呟いて頭をかき、とりあえず悪魔化計画の作戦を練り始めた。