「こっちはそんな暇なんて無いんですよ」

紘哉は真っ黒なスーツを整えながら言う。

「慌てんでもよかろう。死体は逃げたりしない。
ほれ、見てみなさい。あの遠くに見える山を」

茶色いスーツを着た男性は遠くを指差した。

紘哉は耐えきれなくなり、近くの机をバンと叩いた。

「お願いですから足がガクガクするので、これ以上ここに留めるのは止めてください!」

そして――高所恐怖症でもある。