「定価で買ってもよかったんだけど、レンタル落ちの方が安いからさ、あちこち探し回ってようやく手に入れたんだ。おかげさまで七五〇円で買えたよ」
 人気のアニメキャラクターのコスプレもののAVだった。
 辻あずきという名前の、そのくせ加護ちゃんにそっくりな女の子がパッケージで様々な衣装を着ていた。
「ぼくの鞄にはもう入らないから、凛の鞄に入れておいてよ」
 ツムギがそう言ったので、凛の頬はますます膨らんだ。
 馬鹿、馬鹿、とツムギをゲンコツで叩き始めた。
「凛がいるのに、どうしてこんなの見るの」
 浮気者、と凛が言ったとき、店内のお客さんたちが一斉に凛とツムギを振り返った。ニンテンドーDSに夢中のお客さんまでアタシたちを見ていた。
「えっと、あの、その、なんでもないです」
 なぜかアタシが答えると、お客さんたちはまた一斉に首を元に戻した。
 ツムギはため息をつきながら、
「今日はそんな話をしに来たわけじゃないだろ」
 そう言った。
 そうだった。
 今日は、凛の計画がうまくいったかどうか、ツムギがアタシたちの前で、「美嘉の部屋」を見せてくれる、そういう日だった。
 ツムギは鞄からミニPCを取り出した。



 アタシと凛は、ツムギが開いたミニPCのディスプレイを、前のめりになって食い入るように見つめた。
「美嘉の部屋」は確かに美嘉の部屋だった。
 4畳半ほどの狭い部屋に、ベッドと勉強机があり、ベッドには何着かのラブスカイの洋服が並べて置かれていて、美嘉が腕を組んでそれを眺めていた。
「美嘉ちゃんはぬいぐるみを本だなの上にでも置いてくれたみたいだね」
 美嘉の部屋は素人目に見てもいいアングルで録れていた。
 ミュートにしてあった音量をツムギが少しだけ大きくすると、部屋にはラブスカイウォーカーズのアルバムといっしょに歌う美嘉の鼻唄が聞こえた。
 美嘉とメイはアタシのウリが終わる頃、学校の最寄りの駅でアタシを待つ。
 それまではふたりでどこかで遊んだりしてるんだろう。
 美嘉はお風呂上がりらしく、長い黒髪が濡れていた。
 美嘉は今日着る服を決めあぐねているようだった。
 五分ほどあれでもないこれでもないと思案して、ようやく決まったらしく、他の服をクローゼットに戻すと、パジャマを脱ぎ始めた。