夏雲

青春・友情

加藤寛之/著
夏雲
作品番号
680895
最終更新
2011/12/07
総文字数
37,779
ページ数
48ページ
ステータス
未完結
PV数
598
いいね数
0
 アタシはたぶんいたってフツーの女の子だと思う。
 身長は小学生の頃からいつも全国平均とそんなに変わらなくて、体重だってそう。背の順に並んで体育館へ行くときはいつも列の真ん中のあたり。
 男の子にブサイクっていじめられることもないかわりに、かわいいねって褒められたこともない。
 同級生の女の子たちと同じファッション雑誌を買って、それなりにお洒落に気をつかって、服を買うときは友達とかぶらないように気を付けて。
 成績はいつも中の中で、赤点をとって補習授業を受けたことも、百点をとってパパやママからおこづかいをもらったり頭をなでられたりしたこともない。
 体育や美術や技術家庭も、同級生に笑われたりしない程度にはできる。
 だから高校も、中の中の、最近近所にラブホテルが建ったことでおとなたちが少し揉めている、自転車で通える距離の学校だ。
 同級生の女の子たちに遅れをとらないようにそこそこの彼氏を作って、彼の十六歳の誕生日に処女をあげた。もちろん場所は、学校のそばにできたラブホテルだった。彼もはじめてでなかなかうまくできなかった。
 それから、三人姉妹の次女で、妹のように特にかわいがられもしないかわりに、姉のようにしっかりしなさいと口酸っぱく言われることもない。
 平均じゃないことといったら苗字が加藤だから、出席番号がいつも前の方だということくらい。
 アタシの名前は麻衣。
 どこにでもある苗字の、どこにでもある名前の、フツーの女の子だった。
 夏休みが始まるまで。

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