気を取り直して聞いてみた。
「好きな人いるの?」
「いるよ」
その好きな人の事でも思い出したのか、優しい笑顔を見せる誠。
「どんな人どんな人!?」
誠に好きな人がいるなんて意外で、興味津々。
「捻くれで、マイペースで、淋しがりで、鈍感」
「えぇー、それが好きな人なの?」
誠はあんまり趣味がよろしくないらしい。
「そ、一目惚れ」
そう言った誠の顔はいつもと少し違って、カッコ良かった。
「誰ぇ?あたし知ってる?」
あたしはそのキーワードに当て嵌まる人考えてみた。
だけど見当もつかなくてギブアップ。
そんなあたしを誠は指さした。
「ほら、好きな人」
「ん?」
あたしはその指の先を見遣る。
そこには叶チャンの家があった。
「――え、えぇぇ!?叶チャンの事ぉ!!?」
ホントにライバル!!?
てかいつの間に家の前まで!!?
誠が叶チャンを好きな事と、昨日は長く感じた誠との帰り道が、今日はやけに短く感じた事に驚き、あたしは軽いパニックに陥った。
「ほら、鈍感」
そんなあたしをよそに、誠は苦笑した。