「送ってくれなくても大丈夫だょぉ、あたしんち近いし」
叶チャンか、結夢か、一人で帰っているいつもの帰り道を、今日は誠と歩いている。
誠と帰るのは初めて。
隣に叶チャン以外の男の子がいる事に違和感を覚えつつ、もう大分暗くなった道を二人で歩く。
「男の役目だろ」
誠は、教室を出る時と同じ台詞を言う。
作業が終わって窓の外を見ると、もうすっかり暗くなっている事に気付いた誠は、あたしを送ると提案してくれた。
大丈夫だって断ったけど、「男の役目だろ」そう言われ、今にある。
「フェミニスト?」
「のんにだけね」
悪戯っ子みたいに笑ったその顔と台詞に、また、少しときめいてしまった。
最近何なのよ、あたしの心臓!
赤くなった顔を隠すのは夕闇に一任して、平静を装う事に集中した。
「このイギリス人かぶれが」
それでも誠の顔を見れないあたしは、そっぽ向いてそんな事を言う。
明らかに照れ隠しだった。
「何とでも言え」
そう言った誠の顔を、見なくても想像出来る事が疎ましかった。