「誠〜、一緒に帰らない」

その声の主は、一昨日その声で叶チャンを呼んでいた、叶チャンの彼女だった。

「真希、ごめんね。俺一ヶ月くらい忙しいみたいでさ。また今度誘って」

誠は特に悪びれた様子もなく、その真希と呼ばれた叶チャンの彼女に、ごめんと言って左手を上げて『ごめんのポーズ』を取った。

どーして真希サンが誠を誘ってるのか分からなかったけど、どーやら誠は、クラス委員の仕事をするつもりらしい。

「忙しいって……」

誠の言葉を受けて、少し訝し気な顔をして真希サンは言った。

「文化祭のクラス委員になったらしくてさぁ。俺マジメだから頑張るし」

誠は爽やかに笑った。

「……そ、分かったぁ」

真希サンはあたしの存在に今まで気付かなかったようで、目が合い一瞬凄く恐い顔をしてあたしを睨んで、摺り抜けて行った。

その後ろ姿を見て叶チャンとどーなったのかも気になったけど、あのあたしを睨んだ顔を思い出し、思わず悪寒がした。

どーやら嫌われているらしい。

真希サンという人がどんな人かは分からないけど、それだけは確かだった。