叶チャンと、久しぶりに並んで歩く。
「お前転ぶなよ」
そう言ってさりげなく差し出された手を、あたしは遠慮がちに握った。
向かった先は、いつかあの喫茶店から眺めた、ウェディングドレスの飾られたショーウインドーがある、そのまた奥の豪華な建物。
叶チャンはあの時、何を思ってこのドレスを見ていたのかな……。
建物の前には門があり、そこには
『一日体験ウェディング開催中』
と書かれたボードが立て掛けられていた。
「ここ?」
叶チャンを見上げ、問い掛ける。
ボードが立て掛けられた門の奥の敷地には、小さな白いチャペルが見えた。
「らしいよ」
手を引かれ、建物の奥へと入って行った。
何十着もある、純白のウェディングドレス。
あたしはこれを着て、叶チャンとバージンロードを歩く事が夢だった。
今あたしは、そのバージンロードを、純白のドレスを着て歩いてる。
タキシードを着た後ろ姿の、叶チャンの元へ。
スカート全体に付いた、オーガンジー素材のお花のモチーフ。
歩く度に、花びらが揺れた。