「誠だって去年泣いてたじゃんかぁ」

「俺がいつ泣いたよ」

「去年、この日、この場所で!」


頬を膨らませて言うあたしに、誠は苦笑して

「バレてたんだ」
と言った。




何だか、凄く懐かしい。


心が和む。



自然に、笑みが零れた。





でも誠からは、去年あたしがクリスマスにプレゼントした香水の香りはしなくて。


薬指には、指輪はなくて。



あたしの胸は、痛んだ。




「誠、何でここに居るの?」


今更気付いた疑問を、誠に投げ掛ける。


誠はまた苦笑いしてから、目を伏せた。



「放課後いつも、この教室通る時覗いてたから。まだのんを探す癖、直ってなくてさ」



「……誠」



沈黙が、漂う。



そんな沈黙を破る様に、誠は顔を上げて笑った。


「のん、幸せになってって約束しただろ。これじゃ、俺がした事の意味がない」



「……でも」


「俺スゲー悩んだんだ。のんに辛い思いさせたまま付き合いを続けていくのか、それとものんの幸せを願って別れんのか」



誠は、あたしの目をしっかりと見詰めた。


あたしもそれをそらさない。