「俺はいつまでも待ってるから」
一言そう言って、離婚届けに判を押した。
それから良樹が亡くなったのは一年後。
葬式で、久しぶりに二人の顔を見た。
遥も良樹も、笑っていた。
俺の選択は間違っていなかったんだと、その時、やっと思えた。
遥に何度も「また一緒に暮らそう」と言った。
あの頃の、良樹が居なくなった事をイイ事に、傷心の遥に付け込んだ俺とは違う気持ち。
本当に、遥を支えたいと、一緒に生きていきたいと、また家族になりたいと思った。
だが遥は、そんな調子のイイ事は出来ないと、叶一にも合わせる顔がないと言って、首を縦には振らなかった。
それからまた長い時が流れても、俺は遥をずっと待っていた。
何十回も、何百回も一緒に暮らそうと言った。
だけどやっぱり、首を縦に振ってはくれなくて。
俺は東京への転勤が決まった。
遥の住む東京。
遥が東京を離れないのは、まだ、良樹を想っているから……。
それでも俺はイイんだ。
俺も、遥を忘れられそうにはないから。