「お前は、このままじゃ一生後悔する事になる。そんなんで叶一を育てられるのか?もう、良樹の所に行ってくれ」
これは俺の、心からの願いだった。
「離婚しよう。遥、俺はお前にも良樹にも、幸せになって欲しい。癌は、また寛解するかもしれない。二人で支え合っていく事が遥の、お前達の幸せだろ?違うか?」
この先に何が待っているとしても、良樹の最期を看取る事が出来なかったら、遥は一生後悔するだろう。
だけどもしここでハッキリ違うと言われていたなら、俺はもう、何も言わなかったと思う。
遥は泣きながら、
「ごめんなさい」と呟いた。
叶一には悪い事をしたな。
母親を求めて泣くお前に、俺は何もしてやれなかった。
ただ俺が出来るのは、お前をしっかり育てていく事。
俺の愛情は、全てお前に注いでやる。
でも不器用な俺は、いつもダメな父親で。
それでも、こんな俺を父親だと思ってくれるお前に、俺が救われていた。
俺が助けられてた。
俺が教えられていたよ。