仕方ないって、何だよ。
遥を悲しませた事を仕方がないで片付けようだなんて、冗談じゃない。
だが、その気持ちを押し込め、俺はテーブルの下で拳を握りしめた。
「良樹、癌だったの。咽頭癌で、リンパ節まで転移していて……手術したの」
その言葉を聞いた時、握りしめていた拳は、開かれた。
「……癌?」
初耳だった。
良樹が癌だったなんて。
あんなに元気で、そんな兆候これっぽっちもなかった。
遥も気付いていなかった。
俺の呟きにおばさんは小さく頷き、言葉を続けた。
「五年生存率っていうのがあって、上咽頭癌は、それが高くはなかったの。例え手術で癌を摘出出来ても、また再発する恐れがあって……。でも五年間再発しなければ、再発する確率は低いと言われていたの」
おばさんが、たった五年でこんなに老け込んでしまったのは、それが原因だったんだろうか。