近くの落ち着きのある喫茶店で待ち合わせをし、久しぶりに顔を合わせた。
良樹の母は、たった五年の歳月で、とても老け込んで見えた。
どこか疲れているような、猫背のその背中は、とても良樹の母には見えなかった。
いつも化粧をバッチリ決め、オシャレに余念の無かった人が、たった五年でこうも変わるなんて……。
向かい合った俺達は軽く挨拶を交わすと、お互い目を伏せた。
この人がこれから何を話そうとしているのかは分からないが、とても嫌な予感だけはしていた。
「遥サンは元気?隼人クン達、結婚したんですってね」
「はい、四年前に。遥は元気ですよ」
「そう」
おばさんは小さく笑い、また沈黙した。
「あの、お話とは?」
俺が本題に移ろうと声を掛けると、おばさんは困った様に笑って、少しずつ、話し始めた。
「いきなり、挨拶もしないでいなくなって、ごめんなさい。でも、仕方なかったの……」
良樹の事を謝っているのだろうと、すぐに分かった。
遥に一方的な別れを告げ、いきなり姿を消した良樹。