「いえ……」



聞かせてくれて、良かったと思う。




聞かせてくれなかったら、きっと叶チャンは――




「叶一、あぁ見えて辛いの我慢してるから……のぞみチャンにだけしか、心を開けないみたいだし」



そう、聞かせてくれなかったら、叶チャンはまた一人で我慢していたんだと思う。







今以上に。






おじさんが「叶一の為にも聞いて欲しい」って言ったのは、そーゆう事だったんだと思う。




「のぞみチャンには、迷惑ばかり掛けてるね」



「いえッ、あたしこそ叶チャンには迷惑ばかり掛けて……」




おじさんは優しく笑った。




「もし良かったら、聞いてもらいたい事があるんだ。こんなお願いするのは、おかしな話なんだけどね」


「あたしで良かったら、何でも聞かせて下さい」




叶チャンの力に少しでもなれる事なら、あたしは何だってするよ。



叶チャンが、そうしてくれていた様に……。






あたしのそんな気持ちがこもった視線を、おじさんは穏やかに受け止めた。





ブラックコーヒーと紅茶が運ばれてきた後、おじさんの、少し長い話が始まった……