「のぞみチャン時間は大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です」
クラシックなBGMが流れる、落ち着きのある喫茶店に入り、あたし達はこんなぎくしゃくした会話から入った。
おじさんはこの喫茶店は行きつけなのか、マスターと軽く挨拶を交わし、あたしの事を少しからかわれ、奥の席に案内された。
濃い赤色をした、光沢のある柔らかいソファーに腰を沈め、おじさんと向かい合う。
こうやって二人だけで話すのなんてきっと初めてで、慣れない喫茶店の雰囲気と相俟って、何だか凄く落ち着かない。
おじさんの座るソファーの隣には、観葉植物。
あれはパキラって言うんだっけな……
なんて思いながら、あたしは愛想笑いを浮かべた。
「あの時はゴメンね、変な話を聞かせちゃって」
そう言って目を伏せる、どこか寂しそうな姿は、叶チャンに似ていた。
ううん、叶チャンが似ているんだよね……。