何度目かの瞬きで涙が落ちた。

テレビに顔を向けたままの叶チャンに泣いている事がバレないように、座り直すふりをして体ごとそっぽを向いた。


何泣いてるんだあたし……

いきなり泣いたら、また迷惑掛けちゃうじゃん。


涙を止めようと、興味もないバラエティに集中した。

でも三流芸人が司会をしている番組は、案の定大して面白くもなく。


お願いだから、こんな時くらい笑わせてみせてよ。

芸人に、こんなに笑わせて欲しいと切に願ったのは生まれて初めてだった。

そうやって涙と戦っていると、叶チャンがあたしの頭に手を乗せてきた。

「何泣いてんの」

いつもよりも数倍優しい声で言うから、また涙が溢れた。

「な、泣いてなんかないもん」

明らかに涙声で、鼻水まですすっちゃって、まだそっぽを向きながら答えた。

「のぞみからの迷惑を、今更迷惑だなんて思ってねーよ。むしろ俺の楽しみ」

そう言って、あたしの頭をポンポンってしてくれた。

「うぅッ…叶チャ…」

ホントに……?

振り返って叶チャンを見ると

「ぷッ、超ブサイク」

て笑われた。



そんな笑いが、心地良かった。