「俺、ちょっとトイレ行ってきます」
叶チャンのそう言う声と同時に、あたしが少しだけ開けたドアが、外側から大きく開かれた。
あたしは少し後退する。
叶チャンは洗面所に入って来るなり後ろ手でドアを閉め、溜め息を吐いた。
え、あの、トイレならあたし出た方がイイよね。
叶チャンが入って来た時に、一旦離れたドアにまた近付き、ドアノブに手を掛けようとした。
「今点呼してるから。出たらまずい」
叶チャンはノブにのびたあたしの手を掴んで言う。
あ、そーゆう事だったのか。
今先生が来てるって事だよね。
「結夢は?」
「クローゼットに隠れてる」
叶チャンは結夢のその姿を思い出したのか、苦笑した。
あのクールな結夢がクローゼットに……
想像したら、あたしも笑えてきた。
てか、そんな事より――
近い。
何がって、あたし達のこの距離が。