九月になっても、まだまだ残暑が厳しい。
教室の前で誠と別れ、汗を滲ませながら、教室の戸を開けた。
開けた瞬間、教室から冷えた空気が流れてきて、気持ち良かった。
「おはよう」と言ってそのまま教室に入っていくと、日焼けたクラスメート達が挨拶を返してくれた。
まだ夏休みの雰囲気が抜けていないのか、教室内は休み前よりも数倍騒がしかった。
久しぶりの学校。
久しぶりのクラスメート。
夏休みが明ける前は、学校に行くのが凄く億劫だったけど、何だか懐かしくて嬉しくなった。
「結夢おはよう」
廊下側の前から三番目に座る結夢。
今日はまだピロリンは来ていないらしく、結夢の隣の席も前の席も空いていた。
結夢と会うのも久しぶり。
あたしは嬉しくて、笑顔で結夢の席に向かった。
「のん、おはよう」
そう言って顔を向けた結夢の表情は、どこか少し暗かった。
「結夢、夏バテ?」
「え、何で?」
「なんかちょっと……疲れてるように見えたから」
「あ、うん……。色々忙しくてさ、夏バテかも」
そう言って笑った顔は、いつもの結夢だった。