潮の香りに誘われ、あたし達はまた、海へと歩みを進めている。
海へと続く、アスファルトの道。
立ち並ぶ、瓦屋根の民家。
そこは昼間とは違う、穏やかな雰囲気に包まれていた。
人は昼間ほど多くなく、太陽も隠れてしまいそうな程傾いていた。
「結夢達、心配してるかなぁ……」
「大丈夫だろ。ヒロも結夢に話があったみたいだし」
誠はそう言って笑った。
あ、そういえば、気になる事があるって夏休み前に言ってたっけ。
気になる事って、何だったんだろ。
「俺も見せたいモノあったんだ。今日見れるか、まだ分かんないんだけどね」
「見せたいモノ?」
「そ。まだちょっと時間あるけど」
「……何ぃ?」
「秘密♪もーすぐ分かる」
あたしは誠の笑顔に負け、これ以上聞くのをやめた。
あたし達は海岸の近くまで行くと、堤防の上に腰を下ろした。
そこからはどこまでも続く水平線と、沈みそうな赤い太陽が見えた。
あたし達はその水平線と太陽を、無言で眺めた。
何だか少しだけ、切ない気持ちになった。