誠はあたしの浮輪を引っ張りながら、砂浜の方へ歩みを進めた。
て、あれ?
誠歩いてる?
「足、つくの?」
浮輪を引っ張る誠の腕を掴んで聞いた。
「のん、もしかして知らなかった?」
そう言って振り返った誠と同時に、あたしは足を伸ばした。
その伸ばした足元には、確かに地面があって。
あたしアホじゃん。
「ぷッ……くくッ……のん、さすがッ」
「ちょっと笑わないでよ!知らなかったんだから仕方ないでしょッ…………ぷッ」
あたしも膨れながら、笑ってしまった。
誠は、足つくって分かってても、あんなに心配してくれたんだよね。
焦って探してくれる程。
掴んでいた誠の腕をくいッと引っ張った。
予想通り誠の体は少し傾いて、顔が近付いた。
――チュッ
「ありがとッ」
あたしの笑顔とは反対に誠は顔を赤くして、今あたしがキスした頬に手を当てている。
「照れてるのぉ?」
「なッ、ちがッ……」
誠の顔は益々赤くなって
あたしに背を向けて、また浮輪を引っ張って歩き出した。
あたしはその後ろで、引っ張られながらクスクス笑った。