「美姫!」
あたしが教室から呼び掛けても、いつもの様に美姫は振り向きもしない。
美姫は新学期が始まった日からずっと、昼休みは2年の教室の前をうろうろしている。
まぁ、誠に会いに来る為なんだけどね。
でも誠にはいつもあしらわれ、仕方なくまた教室へ戻る。
そして教室へ戻る途中、あたしの教室の前を横切る所を、あたしは呼び止める。
止まってはくれないけどさ。
あたし達は購買へ向かう為に廊下へ出た。
「あんた友達いんの?」
すっかり美姫の態度に慣れてしまった結夢が、そんな事を言った。
美姫は結夢を軽く睨んだ。
「いますけど。ほら、こんなに」
美姫が笑顔で2年の男子達に手を振ると、男子はニヤけた笑顔を浮かべ、美姫に手を振り返した。
すごッ!
アイドル!?
あたしが真剣にビックリしてると、結夢は溜め息を吐いて、呟いた。
「かわいそ……」
その言葉に、美姫は更に結夢を睨んで、駆け足で1年の教室へと続く階段を上って行った。