……誠。
その腕の力に、さっきまで冗談みたいに叶チャンの事を話していたのは、強がりだったんだって気付いた。
それでもあたしの目は、自然と叶チャンの姿を追ってしまう。
……あ
今、一瞬目が合ったような気がした。
でも、叶チャンはそのまま席について椅子に浅く座り、背もたれにおっかかった。
それと同時に、昼休み終了のチャイムが鳴った。
一瞬にして、教室が騒がしくなったような気がした。
「のん、じゃあ教室戻るから。また帰りな」
「うん」
誠はあたしに手を振って、教室を出ていった。
自分の席からその背中を見送りながら、叶チャンを視界の端に入れている自分に、嫌気がさした。