「ま、冗談。んな事より、中條クンじゃなくてヒロって呼んでよ。皆そう呼ぶし」
「あたしは遠慮しとく」
「あれ、何で?」
「別に、何と無く」
結夢は素っ気なくそう言って、イチゴオレを啜った。
「そっか」
「ピロリン、結夢は男の子の事、あんまり名前で呼んだりしないんだよ」
ちょっと落ち込んでいるピロリンに、あたしはフォローを入れた。
結夢はすぐに男の人を信用したりしない。
だから、いきなり親しくしようとしてくる男の人には警戒する。
モテる女にはモテる女なりの悩みがあるのね。
「のん」
「誠ぉ♪」
廊下から誠が顔を出して、あたしを呼んだ。
あたしはうぐいすパンを飲み込んで、誠に笑顔を向ける。
「遊びに来た。てかもしかしてのんの隣のヤンキーって、ヒロの事?」
「おぅ、誠。久しぶり」
「あれ、二人共知り合いなの?」
「まぁ、顔見知り」
ピロリンがニヤリと笑った。
男子には男子なりのネットワークがあるのね。