「のん」
「ん?」
「ありがとな」
「う……うん」
誠は爽やかに笑った。
そんなに嬉しかったのかな。
でも、あたしがあんな事言ったのには理由があるんだ。
それは誠の為じゃなくて、自分の為。
叶チャンを見るとドキドキする気持ち。
叶チャンへの想いは、まだ無くなってなんていなかった事に気付いた。
だから、叶チャンの前でわざと言ったんだ。
そう言っちゃえば、後戻り出来ないから。
あたしは誠の彼女だって、あたしの口から公言する事で、けじめをつける気持ちで言ったんだ……。
教室に戻ると、中條クンが叶チャンと話していた。
周りの女の子達も叶チャンと話したそうに遠巻きで見てるけど、中條クンが怖いのか、中々話し掛けられないでいるようだ。
まぁ、中條クンが居なくても、叶チャンには話し掛けづらいオーラみたいなのがあるんだけどね。
「あ、カッピー」
「……はッ?」
あたしが席につこうとすると、叶チャンの前の席に座っていた中條クンがあたしを見ながら、意味不明な言葉を発した。
『カッピー』って、何?
それは確かにあたしに向けられた言葉だった。