「あぁ、有名だから」
そう言って中條クンはニヤりと笑った。
あたし、別に有名じゃないと思うんだけど。
でももし有名なら、いったい何で有名なんだろ。
あたしの頭にはハテナが沢山浮かんだ。
それに気付いたのか、中條クンは続ける。
「あの霧島叶一と遠野誠を二股掛けてるってね」
中條クンは不敵な笑いを浮かべて言った。
てかッ!
二股ってどーゆう事よ!?
何か酷くない!?
「まぁ嘘だけど」
「はぁ!?」
あまりにも失礼な嘘に、思わず声が裏返ってしまった。
そんなあたしを見て、あたしにこんな声出させた当の本人は、可笑しそうに笑った。
中條クンって、何なんだろう……。
これからしばらく、この隣人に悩まされるような予感がした。
「じゃあ取り敢えず自己紹介してくれ」
新しくこのクラスの担任になる先生は、自分の紹介を一通りしてあたし達に言った。
名簿順に自己紹介が始まり、叶チャンの番になった途端、女子のヒソヒソ声が一際煩くなったような気がした。