朝、あたしは一時間も早く家を出た。


誠はきっと、今日早く迎えに来ると思ったから、それよりも早く家を出ようと思った。



久しぶりに、一人で学校へ向かう。


昨夜新しく積もった足跡の殆どついていない雪を、踏み締めながら歩いた。



教室には誰も居なくて、誠はテスト開始ぎりぎりに教室に入ってきた。




教室に入ってくる誠と目が合って……


誠は悲しそうにしながらも、安心したような顔をした。


あたしを待っててくれたんだね。









「のぞみチャン、殿と何かあったの?」


「え?別に何もないよ……」


自分の席でぼーッとしてると、珍しく宮下クンが話し掛けてきた。

そういえば、宮下クンとは二人だけで話す事、あんまり無かったな。


「いやいや、今日一緒に学校来なかったし、のぞみチャンあいつの事避けてんじゃん」

「そんな事ないよ」

あたしは笑顔で返した。

それに対し宮下クンは、溜め息を吐く。


「あいつさぁ、ヤバイよ。死にそうな顔してんじゃん。あんな殿見た事ねーよ」


苦笑いする宮下クンの顔は、誠を心配する気持ちを隠しきれていなかった。