あたしの不安は一気に溢れ出して、もう止められない。


「もう、ヤダ……辛い」



誠の温もりを、美姫も知ってた。



ねぇ、誠は美姫の事好きだったの?


それとも好きじゃなかった?



答えがどっちでも、あたしは辛い。



「辛いよ……」



とめどなく溢れる涙を、冬の風が一瞬で冷やした。


「なぁ、話して。じゃないと俺、分からない」


誠はあたしと向かい合う様に立って、顔を覗き込んでくる。

あたしはそれを拒む様に、更に俯いた。


「今は、話したくない」


そして誠を振り切って、歩き出した。




もう、誠は追い掛けて来なかった。