「――寒い……」
誠の家を出る時に時間を確認したら、もう9時過ぎだった。
オシャレに気を取られて、すっかり防寒対策を忘れていた。
「大丈夫?これつけてな」
「……あ」
誠は自分がしていたマフラーを、あたしの首に巻いてくれた。
あったかい。
誠の匂いがする。
誠の優しさと、誠の優しい匂いが、あたしの胸をときめかせた。
「誠、ありがとう」
いつもより、ずっとずっとくっついて歩いた。
誠のジャケットのポケットに入っている、繋がれた手の温かさが、恋人って関係を主張してるみたいだった。
「誠の手って、いつもあったかいね」
どんなに寒い時でも、誠の手は温かい。
冷たいあたしの手を、いつも温めてくれる。
「のんの冷たい手をあっためる為だよ。なんてな」
――あ、今……。
「あたしも同じ事思ってた。テレパシー?」
そう言って驚くあたしに、誠は優しく笑い掛けた。
「愛の力だろ」
「……バカじゃん」
何でそういう事、そんなにサラっと言えちゃうかな。
あたしは誠の言葉や行動に、いつもドキドキさせられっぱなしだ。