「あぁ、あそこのショーウインドーね。ここ来るとね、天耶とその話したりするよ」
「結婚しようってぇ?」
「ち、違ッ!そーじゃなくて、どんなドレスがイイとか、どんなのが似合うとか!」
あたしがニヤニヤしながら言うと、結夢は焦ったようにまくし立てた。
「結婚の準備かぁ♪」
更にニヤニヤしてからかうあたしに、結夢は、もうッと溜め息をついた。
結夢のこんな表情を見れるのは、タカヤンの話をしている時だけ。
――恋は魔法ね。
女の子をどんどん可愛くさせる。
あたしはどーだろう?
叶チャンに恋していたあたしと、誠に恋したあたし。
同じ恋なんてきっと無いから、あたしもきっと違うはず。
願わくば、叶チャンに恋していた時以上に、今が可愛くあればイイな。
ふと、もう一度視線をショーウインドーに向けた。
すると、ずっと昔から見てきた後ろ姿があった。
――うそ……
こんな偶然。
嬉しくない偶然。
でもあたしは、その姿から目が離せない。