「ねぇ結夢チャン、恋って不思議ね」
「何、いきなりどーしたの?」
「ん、何と無く」
結夢はパックのいちごオレにストローを挿しながら、怪訝な顔をした。
恋って不思議だ。
結夢がブラックコーヒーを飲む所を、昨日初めて見た。
昨日は、結夢がブラックコーヒーを飲む姿とあの喫茶店の雰囲気があまりにマッチしていたから、気付かなかった。
結夢はこう見えて甘党だ。
昼休みに毎日いちごオレを飲むほど。
「タカヤンに、二日酔いにってコーヒー貰ったんだよね?ブラックだった?」
「うん、ブラックだったけど……それが何?」
結夢は益々訝し気な顔をした。
――やっぱり。
これでつじつまが合った。
結夢はきっと、タカヤンに気を使ったんだ。
タカヤンの好意を無駄にしたくなかったんだろうな。
それできっと、あの喫茶店ではいつも、ブラックコーヒーを頼んでるんだろうな。
ブラックコーヒーを好きになったのか、それとも好きになろうと努力してるのかは分からないけど、結夢をそんな風に変えちゃったのは、紛れも無く恋だった。