「彼女とのクリスマスを、バイトなんかで潰されてたまるかよ」
誠はそう言って、屈託無く笑った。
誠はいつもバイトで、中々二人だけの時間を作れなかった。
付き合い始めた頃、誠がバイトしたいって相談を持ち掛けて来た時、あたしは確かにイイ事だって思った。
“偉いね、頑張ってね”
って応援した。
それはきっと、まだあたしの生活の中では、誠っていう存在が小さかったから。
居たらイイけど、居ない事の方が普通だったから。
こんなに寂しくなるなんて、当時のあたしには分からなかった。
「何処行こっか」
「何処でも……何処だって楽しいと思う」
――二人なら……
あたしも誠に負けず、笑って言った。
あたしは特に行きたい所なんてない。
きっと、誠と過ごせれば何処だって楽しい。
「じゃあ考えとくわ」
あたし達は笑い合った。
そんな計画を立てていると、もうクラスメート達が続々と登校してきた。
見つめ合いながら笑っているあたし達が、
「朝からごちそうさまぁ」
って冷やかされたのは、言うまでもない。