「……誠?」


そっと呼び掛けると、その人影は振り向いた。


「おはよ」

そう言って微笑んだ誠の鼻は、赤かった。


「い、いつから居たの!?」

あたしは慌てて駆け寄った。

「ついさっきだよ」

「ついさっきって、いつもより50分も早いんだよ!?あたしがいつも通り出て来たら、50分も待ってなきゃだったんだよ!?」


あたしは思わず詰め寄る。

そんなあたしの頭を、誠は優しく撫でた。

「でも今、のん居るじゃん。テレパシー?」

そう言って微笑む誠に、あたしの心臓はときめいた。


「昨日といい今日といい……。せっかくあたしが迎えに行こうと思ったのに」

あたしは計画が失敗に終わった事が残念で、ちょっと膨れて俯いた。


あたしよりも一枚も二枚も上手な誠。

嬉しいけど、ちょっと悔しい。


「マジで?それかなり嬉しい」

「だって……」


誠の腕が、あたしを抱き寄せた。


「だって……何?」

頭のすぐ上から、誠の澄んだ声が聞こえる。

それだけで、魔法にかかったみたいに、あたしは素直になれる。


「だって……会いたかったんだもん」



「俺も同じ」