「あたし、誠に話さなきゃいけない事があるの」
「うん、何……?」
「今は、まだ話せないんだけど……。絶対話すから」
あたしが触れられる事を拒んでいた理由。
誠を裏切って、叶チャンに気持ちがいってた事。
こんなに優しく抱きしめてくれる人を、不安にさせたままじゃいけない。
例えそれで嫌われても、きっと言わなきゃいけない事なんだと思う。
でも今は――
今はまだ、この温もりを感じていたい。
「……ん、分かった」
あたしを抱きしめている誠の腕に、力が入ったのが分かった。
「のん、寒いだろ。ごめん、出て来いなんて言って」
冷たくなったあたしの頬に、温かい誠の手が触れた。
……あったかい。
あたしは冷たくなった自分の手で、その手に触れる。
「全然大丈夫。来てくれて嬉しかったもん」
家に帰ってからすぐに電話したから、あたしは学校に行く時と同じ格好をしている。
まさに完全防備だ。
でも十二月のこの時間は、さすがに少し寒かった。