「……バカじゃん」
ホントは嬉しいのに、こんな時何て言ってイイか分からない。
「バカだよ。バカみたいに、のんが好き……」
そう言ってハニカんだ誠の顔が真っ赤だったのは、きっと寒さの所為だけじゃなかった。
あたしも顔を真っ赤にしながら、思わず誠に抱き着いていた。
「あったかい……」
心地イイ。
「のん……、大丈夫なの?」
触れられる事をいつも怖がっていたあたしの予想外の行動に、誠の腕は、あたしを抱きしめてイイのか空をさ迷っている。
「うん。抱きしめて」
あたしのその言葉に、誠の心臓が大きく脈打った事が、ジャケット越しでも分かった。
そして、優しく抱きしめてくれた。
不思議。
ただ一緒に帰らなかっただけなのに。
ただいつも会えない時間に会ってるだけなのに。
会いに来てくれただけなのに……。
寂しさも、愛しさも、泣きそうになるくらい感じた。
怖さなんて感情は、この気持ちには敵わない。
誠に触れられて、あの時叶チャンにされた事をもう思い出したりしない。
誠への気持ちも、誠の温もりも、偉大だった事に気が付いたから。